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『ヒプノシスマイク』山田二郎役・石谷春貴インタビュー

石谷春貴『ヒプノシスマイク』インタビュー

『ヒプマイ』山田二郎役・石谷春貴が語る、ヒップホップ文化とアニメ文化の“親和性”「どちらも“言葉”が重要な役割を担っている」

 男性声優によるラッププロジェクト『ヒプノシスマイク(ヒプマイ)』。イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュクからなる4つの地域を舞台にラップバトルを繰り広げるという内容で、CDが続々とリリースされている。ヒップホップシーンの人気アーティストも巻き込んで話題を集め、新曲「The Champion」はZeebraがプロデュースを手がけた。昨年11月17日にZepp DiverCityで行われライブは、全国116館の映画館にてライブビューイングも実施されるほど人気に。声優界のみならず、ミュージックシーンでも注目を集める『ヒプマイ』で、イケブクロ・ディビジョンの山田二郎役を務める石谷春貴に、ラップ経験ゼロから始めた感想や、『ヒプマイ』にかける想いなどを聞いた。


インタビュー

■ヒップホップファンとアニメファンが「一緒に成長していく」という共感が得られた

――最初にラップをやると聞いた時の感想を教えてください。
【石谷春貴(以下、石谷)】僕はクラシック音楽やゲームミュージックなどインストゥルメンタル(歌のない楽曲・演奏)をよく聴いていて、ラップにほとんど触れないで生きてきました。『響け!ユーフォニアム』ではトロンボーンを発表会で吹かせてもらって、その次はラップ?…みたいな(笑)。「本当に声優の仕事の幅がめちゃくちゃ広がってるな」と思いました。

――未知の世界に飛び込む恐怖感はありましたか?
【石谷】イケブクロ・ディビジョンは、山田一郎(木村昴)、山田二郎(石谷)、山田三郎(天ア滉平)の3人ですが、昴さんは元々ラップに造詣が深くて、自分でラップの歌詞を書くほど。天アくんも『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)を見てラップを好きになっていて下地がありました。一方、自分は何も知識がなくて、ラップのいろはを解説してもらうところから始まりました。だから最初はついていくのに必死で、みんなに置いていかれないようにって…。僕が演じる二郎は一郎を神聖視しつつ実力もある設定なので、そのキャラクターに近づけるように頑張りました。

――知識が全くないなか、相当練習をされたのでは?
【石谷】まずは何を言っているのかを聞き取るために何回も聞きました。『フリースタイルダンジョン』を見たり、昴さんが勧めてくださった曲を聴いたりもしました。『ニコ生』のゲストに来てくださるラッパーのKEN THE 390さんや、ラッパ我リヤさんの曲を聴いて、「自分に合うラップって何なんだろう」っていうところを考えていくうちに、自然とラップが楽しくなっていました。


――『ヒプマイ』が、世間的に大ブレイクすると思っていましたか?
【石谷】まず驚いたのがYouTubeで全編無料公開していたことです。初心者の方が入ってきやすいよう、環境づくりがされていた点は大きいと思います。また、ファンの皆さんを飽きさせないように、情報を間断なく出して、熱量が途切れないような展開もブレイクの要因だと思います。


――とはいえ、これまでヒップホップファンとアニメファンとの間には距離があったかと思います。
【石谷】その点は、ファンの方も出演者もイチから始めているため、“一緒に成長していく”という共感が得られたっていうのも大きいと思います。『ニコ生』を見てくださってる方々は、僕とか天アくんとかの成長を見てくれていて、成長を支えてくれました。


――成長する中で、ヒップホップカルチャーとの距離を少しずつ詰めていったんですね。TV番組『フリースタイルダンジョン』の人気もあったり、ラップに対する聴きやすい土壌ができつつあるタイミングもあったかと思います。
【石谷】そうですね。人気番組の影響もあって、ラッパーの方のイメージが変わったというか、ちょっと怖い人たちっていう先入観が無くなって、「本当はそうじゃないんだ」ってことを理解したタイミングだったっていうのもあると思います。


――もはや、人気アーティストの楽曲の中にラップがあるのは当たり前の時代です。
【石谷】ヒップホップカルチャーっていうのは、アニメ業界とは交わらない“アンダーグラウンド”の文化っていうイメージがあったと思います。でも、実はアニメも“アンダーグラウンド”の文化だと思うんです。だから、アニメとラップって相性がいいのかもしれません。その真ん中にいる声優の僕たちが、互いの架け橋になれればなっていう思いもあります。


■「仲良くけんかしよう」で始まり、終わりは「最高だった」って認めあえる最高の関係

――『ヒプマイ』は、4つのエリアを舞台にしたライバル関係も見どころです。
【石谷】入間銃兎役の駒田(航)君とラップでバチバチするところだったんですけど、始まる前は「仲良くけんかしよう」って握手してからハグしたり、終わった後は「最高だった」って認めあったり…。お互いを刺激しあえる最高の関係だと思います。


――エリア間の勝負に触発され、ライブも規模が大きくなっていますね。
【石谷】まだ1年半ぐらいのコンテンツですが、これって異様な光景だと思うんです。多分、ライブを生で見られたらわかると思うんですけど、「コレってアニメのライブじゃないな…」って感じると思います。声優イベントとしては間違いなく異端です。サイリウムは危ないということで、腕にはめるリングライトが公式で発売されていたりもします。

――ライブの話が出ましたが、『ヒプマイ』は男性ファンも多いと聞いています。声優イベントでは女性ファンが圧倒的に多いと思いますが、こうした男女比率になった理由は何でしょうか。
【石谷】やっぱり楽曲だと思います。それぞれの世代に刺さる曲があって、制作の人たちもディビジョンごとにバトルしてるかのように、素晴らしい曲を作ってくださって。12人のキャラがいて、その12人それぞれのラップがあるというのが、ファンのみなさんにとっても新しいのではないでしょうか。盛り上がる曲もあるし、ポエトリーラップ(歌詞を読むようなラップ)や、バトルの曲もある。ヨコハマの曲は本当に横浜で流行った曲だったり、いろんな世代がかっこいいと思える曲が魅力的です。


――このムーブメントは、Zeebraさんをはじめ、ラップ界のトップランナーたちを巻き込んだ動きになっています。ライブなどで、ヒップホップアーティストの方から何か声をかけてもらったりしましたか?
【石谷】KEN THE 390さん、サイプレス上野さんは「ライブに来て」と声を掛けてくださいました。また、『ヒプマイ』のファンがヒップホップアーティストの方々に興味を持って、実際にライブに行ったりということも増えているようです。


――アニメカルチャーとヒップホップカルチャーの架け橋になっているんですね。
【石谷】声優がラップをすることによって、ラッパーの人が立てないところに立てたりだとか、感情の起伏を大きく表現できたり、それに別人格のキャラクターを背負って歌うということは、ラッパーの皆さんも驚かれていました。アニメファンとヒップホップファンによる相乗効果は新しい動きみたいです。


――『ヒプマイ』が架け橋になっていることはどう思いますか?
【石谷】僕自身も『ヒプマイ』がきっかけでヒップホップの曲を聴くようになりました。だから、アニメはアニメだけ、ラップはラップだけっていう人たちの視野を広げられる可能性を強く感じています。


――先ほど、同じ“アンダーグラウンド”の世界だとおっしゃっていました。
【石谷】僕の勝手な解釈ですが、親和性はあると思うんです。アニメって昔から「分析」する文化があります。アニメを見ることで解釈だったりストーリーの構築を考えるのが楽しい。ラップもそうで、リリックの構築や内容を理解しようと考える部分がある。そして、そのどちらも“言葉”が重要な役割を担っている。お互いのファンの方に目を向けていただくっていうのは『ヒプマイ』の活動を通じてずっと考えている部分で、今回のインタビューの中でも、双方に勧められるようなお話をしたいな、という想いがずっと心の中にありました。


――最後に、オリコンミュージックストアのボイスアラームについて感想を聞かせてください。
【石谷】キャラクターのパーソナルな部分と関係性で、声の優しさだったりを想像していく作業は、自分的にも新しくて面白かったです。「起こす」というシチュエーションでもこんなに違うんだって(笑)。「こういう子だったらこう語尾上がるだろうな」とか、「下がるだろうな」とか、個性も強かったっていうのもあって、分かりやすく差を表現できたと思います。

石谷春貴『ヒプノシスマイク』インタビュー

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