「鷲崎健のロレンチーニ便」第60回

鷲崎健のロレンチーニ便

第60回(2021/05/26)


■テーマ「80’s」


 最近はなんだか80'sの洋楽ばかり聴いている。それも有名どころばかり。

 編者のセンスとかが入る余地もないようなベタベタなコンピレーションアルバムを買っては、半分以上かぶっていたりする選曲を逆に愉快に感じている。普段と逆だなあ。
 普段は誰も知らないようなニッチでマイナーでアンダーカルチャーな音楽を好んで聴く節があるのでこういう買いものは新鮮で楽しい。

 一通り音楽好きとしてある程度のジャンルを聞いてきたので、どういう曲が自分の音楽的性感帯を刺激するのか大体わかっていてそれを凌駕するような未知の快感に出会うべくある種特殊イメクラみたいなCD収集をしてきて、その中で例えばイタリアのアニソンCDとか ムシ声とか ぼういずものとか 「アタリ」のものもあったのだが、あの頃みんなで共有した共通項みたいな音楽をわざわざ買う、というのは正直80年代当時にも無かった。

 これは別に捻くれてるからというより(捻くれてはいましたが)貧乏だったため漫画にしろ音楽にしろ誰か友達が買いそうなものはできるだけ被らないように集める、という心情によるものだった。
 しかしうっかり友達なんていないという事実に気づかないままだったので、テレビから流れるレベルの洋楽ヒットしか知らないまま育ってしまったのだ。


 洋楽、という響きに含まれるなんとなく背伸びして聞いている感じがとてもよい。日本とそれ以外、という大雑把な分け方が大変可愛らしい。

 はっきり言ってあの頃、アメリカンロックとブリティッシュロックの違いなんて全くわかっていなかった。同じ英語なんだから分ける必要ないだろう、くらいに思っていた。あれ?ビートルズってどっち?とか。
 どっちにしろビートルズを買うことは無かったのでその問いは虚しく空を飛んでいくだけなのだが。その後いつか聴くだろうと思っていたビートルズは遂にがっぷり四つには組まないままである。ストーンズは割と聞いたんだけど。

 当時の感覚を文章でうまく表現できるか分からないがストーンズは80年以降失速したイメージがあり、有り体に言うとクラスでその名を知るものはほぼいなかった。つい最近コラムに書きましたね(※編注:第56回「90年」参照)。洋楽に興味を持ち始めた中学生たちの興味のエアポケットにあるバンドだった。86年に『ダーティワーク』というアルバムが出てロック好きにとっては「ストーンズ復活!」という感もあったのだが如何せん中学生にはアプローチは及んでいなかった。
 そしてみんなに及んでいないんだったらと喜んで手を出した少年鷲崎。そのままキンクスやフェイセズ、ドアーズ、T REXなんかを集めるも【四ツ谷】ビートルズを避けてぐるっと回る環状線みたいに興味を繋げていった。

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