- HOME
- 特集
- MYTH & ROID『TIT FOR TAT』配信中!
- 独占インタビュー
アニメ音楽史に多大なるインパクトを与え続けている音楽プロデューサーTom-H@ck(トムハック)と、ボーカルのKIHOW(キホウ)をはじめとする多数のクリエイターで構成されるコンテンポラリー・クリエイティブ・ユニットMYTH & ROID。これまで『オーバーロード』シリーズや『Re:ゼロから始める異世界生活』、『幼女戦記』など、いわゆる“異世界系”のアニメ作品のテーマ曲を担当してきた彼らの10枚目のシングルであり、TVアニメ『慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜』のオープニングテーマとなる『TIT FOR TAT』が10月23日(水)に発売される。8枚目のシングル『shadowgraph』のMVの再生回数が発売前に100万回を超え、2019年10月には中国でワンマンツアーを開催するなど、今世界から注目されている彼ら。そんな彼らに今回の楽曲のこだわりや、アニソン市場の第1線で活躍しながら感じている日本の音楽界の課題について教えてもらった。
■ラウドロックを意識した新譜は、内なるエネルギーを外へと発散する1曲に
――記念すべき10枚目となる新曲「TIT FOR TAT」は、これまでのMYTH & ROIDが手掛けた楽曲にはなかったロックサウンド調な1曲だと感じました。毎度、新たな試みをされているMYTH & ROIDとして、今回はどのような思いで、どのような試みに挑戦しましたか?
今回は人間の内側にため込んだエネルギーを、外へと吐き出すような1曲にしました。これはアニメーターや監督、プロデューサーからのオーダーでもありましたし、今までの僕らの楽曲って歌詞もサウンドも内側に響くものが多かったので、いい意味で印象を変えたいなと思って。一緒に手を上げて「騒ごう」とのニュアンスが強い楽曲に仕上げましたね。
楽曲を作っていく段階で今回は直球のロックだときいたのですが、私の音楽ルーツには激しいロックのようなものがなかったので、勉強しつつ自分のものとして作りこむ必要がありました。その時ラウドロックの楽曲をいくつか教えていただいて、なるほどと楽曲の印象のみでデモを録ってみたんですけど…それは失敗してしまって。
そうだったね(笑)。
私はね、言われたとおりにやったつもりだったんですよ(笑)“ラウドロック”というくらいだから今までにはないくらい強くシャウトする必要があるのかなと思いまして...。
あれはね、もうシャウトを超えて、デスボイスだったよ(笑)。
そうですね…。歌を録る前に「普段のディレクションも含めて、今まで言ってきたこと全部忘れていい」と言われたのもあって、それくらいいつもとは違うことをしないといけないと思ってしまったんですよね(笑)。
そんなこともあったんですけどね、今回の楽曲、実は今までの楽曲の中で声の重ね方が一番薄いんですよ。だから、そのままのKIHOWちゃんの歌声が聞こえるんです。
――声の重ね方を一番薄くしたのには、なにか理由があるんですか?
前にテレビ番組で、KIHOWちゃんが男性キーの曲を歌ったんですけど、それがめちゃくちゃかっこよくて。「いつか作りたいね」って話してました。んで、今回曲を作る中で、最初はもう少しシンセサイザーとかギターが鳴っているデジタルな感じだったんですけど、「10枚目だし、ちょっと違うことやりたいな」って思って、途中からサウンドをガラッと変えたんです。それで、ニッケルバックとかラウドロックの曲を参考にしながら、あえてシンプルな楽曲構成にしてみたところ、結果的にそのままの声が聞こえるような1曲になりました。新しいことをやっていかないと、聞いている側も作っている側も飽きちゃいますからね!
■1クール100曲超のアニソン戦国時代を生き残るには
――MYTH & ROIDといえば、これまでに数々のアニメとのタイアップ曲を仕上げてきて、その中でヒット作や話題となる楽曲を生み出してきました。そんなお2人に1クール80本のアニメが放送され、120曲以上の楽曲が生み出されるアニメの楽曲を手掛ける価値をお伺いしたいです。
そんなに出ているんですね…。単純にCDもDVDもどんなに良いものでも売れなくなっている時代なので、なんというかビジネスモデルがもはや崩壊していると感じていて…。だから、売る側は作る側以上にしんどいだろうなと思っちゃいます。長年携わっている中で、放送されているアニメが増え、アニメがメジャーなジャンルを確立している一方、僕の中でのアニソン全盛期は、やはり7年前だと感じていて、全盛期じゃない過渡期の今、アニソンを作ってる作曲家、作詞家、クリエイター、みんな昔より悩んでいる印象がありますね。というのも、もう既に出尽くしている感もあるので。だから、やはり本物が残っていくんじゃないかなって思います。
私は単純にそんなにたくさんの披露の場があるということは素晴らしいことだなと思いますし、実際にありがたいことだと感じています。
■日本だけじゃなく、アニソン業界全体で世界に目を向けていきたい
――なるほど。お2人といえば、中国でのワンマンツアーや、海外で開催される音楽フェスへの参加など、海外での活躍も目覚ましい印象ですが、海外の動向も踏まえた上で日本の音楽業界の中でのアニソンの立ち位置をどのように感じていますか?
正直ね、日本では、アニソンはアニソン、J-POPはJ-POP、洋楽は洋楽っていうカテゴライズが強いので、アニソンとJ-POPの垣根がなくなることはないんじゃないかなと思っています。だから、正直、1億人の日本でドメスティックに、どうヒットするかということを考えるのは、ちょっともったいないかなと思っていて、それよりも何十億人いる世界からどのように注目されるかが重要だと僕は思っているんですよね。
日本でワンマンをやる前に、中国でワンマンをやることが決まってしまったくらいですからね。
――国内でのライブを心待ちにしているファンもいると思います。
日本では完全にタイミングを逃しちゃったっていうのもあるんだけど、やるときはとことん世界観を作りこんでやりたいよね。あとは、ライブ以外のところでいうと、これからもYouTubeには注力していきたいですね。YouTubeは、サブスクリプション以上に収益がバカにできませんし、日本とか世界とか問わず多くの人に一気に届けることができる…一石五鳥くらいメリットがありますから。そうやって、多くを見据えながら、いつか日本の音楽業界の壁を突破できたらいいなと思います。
2019年10月23日(水)発売
<収録内容>
1. TIT FOR TAT (TVアニメ「慎重勇者〜この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる〜」OPテーマ)
2. STYX HELIX -KIHOW Style edition-
3. TIT FOR TAT(instrumental)
4. STYX HELIX -KIHOW Style edition-(instrumental)
価格:1200円+税 発売・販売:KADOKAWA
<発売中!>「PANTA RHEI」(TVアニメ「異世界チート魔術師」OPテーマ)