ユプシロン

ユプシロン

近年VTuber人気で市場が増加してる。しかし、活動を始めても数値に伸び悩むVTuberは少なくない。そんな中、昨年VTuberシンガーとして活躍を始めたユプシロンがYoutubeのチャンネル登録者数、再生回数を着実に増やしていき、短期間で前例のない記録を打ち出している。 勢いに乗る中3rdシングル「コスチューム」がリリースされた。昨年2ndシングル「ハート」に続きリリースタイミングでインタビューを慣行。新譜の事やYoutubeでの戦略などを聞いてみた。

―― オリコンミュージックでのインタビューは2回目になりますね。ユプシロンさんは昨年2020年4月18日にVSingerデビューされて、9ヶ月強でYoutubeのチャンネル登録者数が25,000人を突破、更に総再生回数が100万回突破とハイペースで成長をされています。YouTuberやVTuberでも中々達成できない数値かと思いますが、戦略や工夫を考えて展開をされていましたでしょうか?

戦略ですか(笑) 戦略…というと、正直、狙ってやってみたことはほぼ外れていますね(笑) 日にちを狙って動画を投稿したり、最新曲を歌ってみたり。数字の伸びだけで考えると、正直、狙ってやったことはあまり効果がなかったです。工夫と言えるかはわからないのですが、新旧関係なく、まずは知ってる人が多そうな曲をカバーして、聴いてもらえる機会を増やすことはしました。知っている曲の方が「聴いてみようかな」となりやすいと思ったので。あとは、カバー曲も音のクオリティにすごくこだわっています。

―― 選曲が大事なんですね。

もちろん好きな曲だから選んで歌っているんですけどね。好きじゃなかったり、覚えていないと、歌に出てしまうと思うので。あとは自分のキーや声の雰囲気に合う曲かどうかもすごく考えます。「歌ってみた」を聴く楽しみって、クラブミュージックのリミックス盤みたいな楽しみ方だと思うので、僕が歌ったらどんなリミックスになるかが想像できてワクワクしないとカバーする意味ないかなって。あとは歌っててその曲の凄さとか美しさに気付くことが多いので“この曲のことをもっと知りたい”っていう曲を選びますね。戦略じゃなくてすみません(笑)

―― リミックス盤みたいな楽しみ方はその通りですよね。同じ曲で、違うDJのRemixを聴き漁る、みたいな。

そうなんですよ!本家が一番なのはもちろんなのですが、その違いを楽んだり、リスナーによって好き嫌いがわかれたりするのも面白いなって。そして、歌い手と聴き手で一緒になって「やっぱこの曲いいよね」ってなる瞬間も好きです。アレンジャーさんに頼んでピアノアレンジしてもらって歌った「だから僕は音楽を辞めた(ヨルシカ)」なんかは、ピアノ用の歌い方というか、本家とは違う雰囲気で歌ったのがいろんな人に届いて、僕のことを知ってもらえた気がします。

―― 音のこだわりや工夫はどんなところですか?

どんなMIXにしてもらうかをイメージしてから歌の録音をするようにしています。強弱とか、コーラスとか、それで全然変わってくるので。MIXの方にけっこう細かく注文しています。人気の先輩方や伸びている方たちを聴くと、みんな自分の声の良さをわかって歌っているなと思って。いい意味であざとくて、遊び心もちゃんとある方たちが伸びている気がしますね(笑) 活動を始めてすごく感じたのは、リスナーさんの耳がめちゃくちゃ肥えている(笑) いい音楽が気軽に聴ける時代だから、専門的なことはわからなくても自然と聴き分けていると思うんですよね。耳障りの良さというか。僕もまだまだ音楽勉強中で、専門的なことはほぼわからないのですが、活動を始めてから耳が育った気がします(笑) 昔の歌を消したくなります(笑)

―― 今回の新曲「コスチューム」は、4つ打ちのリズムにハードなギターとピアノが絡む疾走感溢れるナンバーで、ロック的な部分は残りつつも全体的なテイストが変わりました。この様な楽曲に変化した事について教えてください。

変わりましたかね(笑) 自分では変化球の曲だとは思っていなくて、自然な流れかなって思って3rdにこの曲を出しました。今回、作詞は僕ですが、曲は作っていなくて作ってもらったんですよ。そういう意味では曲の癖とかが違うかもしれないですね。自分で作曲することもしていきますが、世界を広げたいので、提供曲も歌っていきたいと思っています。

―― 1st、2ndはユプシロンさんsachiさんの共同作曲でしたが、今作の作曲は新人ボカロPのカッパナッツさんですね。今回作曲を依頼した経緯は?

依頼というか「ユプシロンに曲作るわ〜」「オッケー、よろしく〜」みたいなノリで始まりましたね(笑) カッパナッツは友達の友達だったんですけど、お前ら合うと思うよって紹介されてから、紹介してくれた友達より仲良くなって。僕は周りにあまり音楽作っている人とか活動者がいないので、アツく音楽を語れる数少ない友人のひとりです。

―― 縁があって生まれた作品なんですね。制作やレコーディングはどんな流れだったのでしょうか。

どんな曲が歌いたいかとか、オリジナル曲で大事にしていること、歌詞で言いたいことを言うためのメロみたいな、僕のこだわりをたくさん伝えて、まずはワンコーラス作ってもらいました。その回答がこの曲で。「ユプシロンのイメージと違ったらかきなおす」って言われたんですけど、カッパナッツの提案がおもしろくて、歌ってみたいなと思いました。

―― 提案というのは?

ちゃんと音楽業界のトレンドをおさえよう、という。ファッション業界でも、ブランドコンセプトは変わらないんだけど、シーズンによって流行を取り入れるじゃないですか。音楽業界も流行はあると言っていて、その流行をユプシロンが歌ったらどうなるのか、と。だからこの曲は、一年後にリリースされたらダメで、今だから意味があるんです。そういう作品作りもおもしろいなと思って。

―― ユプシロンという世界観はそのままに、流行に乗ったと。

自分としてはそんなイメージです。もちろん、長く愛される曲になってほしいし、消えていく曲みたいなネガティブなイメージではなく。

―― レコーディングはどうでしたか?

今作も自分でレコーディングして、じっくり向き合って歌ったんですけど、実は一回完パケさせた歌をボツにして、もう一回(本番を)録り直したんですよ。歌詞はすごくサクサクっと書けたんですけど、歌に込めるのがすごく難しくって。これでいいのかなって思いながらMIXの方に提出したら「もう一回歌う?」って言われて。見透かされてたんですよね(笑)

―― どうやって抜け出せたの?

歌詞を一ヶ所変えたんです。2サビ前に「賢くて優しくて…それが何になるんだ?」っていう歌詞があるんですけど「…それが何になるんだ?」のところが、最初は違う歌詞だったんです。それをこの歌詞に変えたら、この曲のすべてのストーリーが自分の中で繋がった気がして。まったく迷いなく、ど頭からすんなりレコーディングできました。たぶん、最初に歌ったときの歌い方と全然違う表現で完成しました(笑)

―― 歌詞一ヶ所で、歌い方まで変わるんですね!他に歌詞でこだわったところはありますか?

歌詞の中で言っていることは、ずっと昔から考えてていつか音楽にしたいなと思っていたことだったので、今回この曲で吐き出せたのがすごく嬉しいです、実は。僕が昔から思っていること、という意味では、ステレオタイプや「ハート」の流れです。自分のことを歌っています(笑) こだわりは、曲のテンポが速いので、特にサビの歌詞が聞き取り辛いかなと思って、サビは2回繰り返しにしたのと、サビのど頭の繰り返しの音を印象付けるために、濁音を使ったことですね。「トギレトギレ」とか「ナガレナガレ」とか。

―― たしかに、サビの頭は印象的ですね。覚えやすいです!歌詞の内容は「みんな役を演じている」というテーマであっていますか?この意図は?

あっています(笑)「パパも ママも 本当はただの人だし 僕だけに演じているだけかもね」っていう言葉はずっと子供の頃から思っていて。でもそれが「いや、自分もだわ」って。一番最初に「こんな僕でいるのも明日が終わりの日かもしれない」って自分で言いつつ、同じこと・同じサビを繰り返してるんですよ。つまり、同じ毎日を繰り返している。そんな皮肉なんです。

―― サビの繰り返しにも意味があるんですね。今回のMVは前作とは違ったテイストのアニメーションMVですが、どういう意図でこのMVになったのですか?

曲を聴いたときに、もう最初から、今回描いていただいたイラストレーターさんの九十九 円さんのような絵柄のイメージだったんです。かわいくて、アートで、でもなんか刺さる、みたいな(笑) 男女の制服ユプシロンと “化け物みたいな自分に纏わりついているもの”をイメージしていて、イラストレーターさんを探していたらピッタリな方がいて!また今回もTwitterからDMを送ったんです(笑) それですぐにOKのお返事を頂き、イメージ以上のイラストを描いてくださいました。制服のデザインも、化け物も、九十九さんの絵柄になったverのユプシロンも新鮮で、この曲に合うなって思います。

―― そう思います。すごくいい意味で、曲だけ聴いた時と、映像が付いた時で聴こえ方がまた変わりますね。

そう思います。作品のコラボレーションの力だと思います!モーションと動画は、少し前からTwitterでお互いフォローしあっていた、ろーまじんさんにお願いしました。ろーまじんさんはボカロPのMVとかも作っている方なので、前から見ていて。万華鏡みたいな世界とか、カオスな感じが得意なイメージがあったので、九十九さんのイラストにろーまじんさんのカオスさが合わさったらどうなるんだろうと一人でニヤニヤしていました。

―― ニヤニヤですか(笑) たしかに、かわいい印象の絵柄に、体が蝕まれていくような映像演出があったり、考察したくなるようなMVですね!

今回は絵コンテを描かなかったんです。ストーリー性というよりは、感情の一部を切り取ったようなイメージビデオが合うなと思ったので。ろーまじんさんにほぼお任せで、イラストの演出をしてもらいました。九十九さんのイラストにも、ろーまじんさんの動画にも、すべてに意味があるので考察してほしいです。

―― 考察をひとつネタバレするとしたら、どこでしょうか(笑)

えぇ!(笑) うーん、二番サビの最後で、黒い靄が晴れて主人公のいる場所の背景全体図が見えるんですが、そこに標語が貼ってあるポスターがあるんですよ。九十九さんから標語ポスターを張るのはどうですかという提案があり、僕がいくつか標語を考えて、これを選んでもらったんですけど。「えがおがきみのいいところ」って書いてあるのに、主人公は作品中で一度も笑わないんです。ろーまじんさんの、この霧が晴れていく演出がきたときに、そりゃあもう「アア〜」と叫びたくもなりますよね、と(笑)

―― なるほど(笑) 新曲の話はこの辺にして。ユプシロンさんは現在3D化に向けてクラウドファンディングを実施し資金を募っておりますが、3D化をされるとどの様な活動が出来ますか?

色々ありますが、一番大きいのは、ライブができるようになります!僕は現在Live2dの上半身のカラダしか持っていないので、歩いたり走ったりもできないし、後ろも向けないんですよ(笑) 音楽を作って歌ってインターネットで公開するだけなら今のままでもできますが、ライブをしたり、他のVtuberさんとバーチャル空間で共演したりするには、3Dボディが必要になるんです。なので、可能性を広げるためにも、いつかライブをするためにも、クラウドファンディングに挑戦しました!

―― 成功を祈っています!そして最後に、今後決まっている予定や、やってみたい事がありましたら教えてください。

現在2つ、Vtuberのコンピレーションアルバムに参加が決まっているので、今年の初夏〜夏ごろに2曲必ず新曲が出ます!「ワコンピ」と「エンタスアルバム2」というアルバムで、どちらもご一緒させていただくクリエイターさんが違うので、どんな曲になるか楽しみです!作詞はどちらも僕が担当する予定です。 あとは、もし3D化のクラウドファンディングが成功したら、池袋ヒューマックスシネマズ様の協賛で、池袋ヒューマックスシネマズの映画館で3Dお披露目イベントをやることになっています。何としても成功させたいので、新曲コスチュームと、3Dクラウドファンディングもよろしくお願いします!

YouTube:https://youtu.be/irXFiJ9FlC4 
Twitter:https://twitter.com/yupsilon_

楽曲試聴・ダウンロード

「コスチューム」

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