「鷲崎健のロレンチーニ便」第41回

第41回（2020/08/12）

■テーマ「ライブ盤」

　Twitterで好きなLIVE盤を9枚載せるというハッシュタグがあって軽い気持ちで自分でも考えてみたがこれが大変難しい。いくら時間をかけても9枚に絞りきれない。

　考えてみると昔からライブレコーディングの作品が好きだった。初めて手を出すバンド・ミュージシャンの場合”ベスト盤を選ぶ”という選択、”最新作を選ぶ”という選択、逆に”デビュー盤に魅力が詰まってるんだぜ”という人もいるだろう。

　自分の場合だいたいにおいてライブ盤を選んでしまう。明らかにスタジオレコーディングに向いてるアーティストもいるのに。

　これは多分あれでしょうね。幼少の頃に感動したライブ盤があったからである。

　拙著『為すも為さぬもないのだが』に詳しく書いてあるが、子供の頃母の実家のある宮崎の祖父母宅に預けられていたことがあった。母の妹たち、きょうこ姉ちゃんとみやこ姉ちゃんといつこ姉ちゃんの三人が母替わりで、今考えるとまだ二十代の前半から中盤あたりといった少女たちに蝶よ花よと育てられたワケだ。

　乳母日傘（編注：おんばひがさ）でおおきくなって、というほどでもないがとにかくその頃記憶にあるのは三人のうち誰かが運転する車に乗っているという思い出。

　家族の誰も免許を持ってなかったので（と思っていたのだが自分が産まれる前は父は車を持っていたらしい）車に乗るということ自体がちょっと特別な経験だったのだ。
　その車の中ではいつもさだまさしか山口百恵か海援隊がかかっていた。多分車は一台で三人が代わる代わる運転していたのだと思う。誰が運転する車に乗ってもそのどれかがかかっていて、「車に乗る」という非日常のBGMだったのだ。

　まだCDが車でかけれる時代じゃない。それ以前にCD自体がまだ開発される前の話だ。CDではなくカセットテープ。なので一枚ではなく一本と表現するがそのなかの一本が海援隊のライブ盤だった。

　おしゃべりがあって歌があって、その感じが好きだったのかな。
　海援隊はその一本しか知らないのでスタジオ盤と聴き較べるということもない。とにかくテレビで見たことあるあの武田鉄矢とかいう人が歌ってるのはわかる。でも知らない人も歌っている。これはメンバーの千葉さんと中牟田さんであると後にわかるのだが、意外と排他的というか現場にいないと分からない笑い声とか発言なんかが割とあってそこらへんの「不親切さ」が面白かったのかも知れない。とにかくこのライブ盤を録音してもらって神戸に戻った後もよく聴いていた。

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