「鷲崎健のロレンチーニ便」第61回

第61回（2021/06/09）

■テーマ「お墓」

　趣味の世界において「好き」という気持ちはすでに才能なのだ、と言われることがある。
　その対象を好きで居続けること、新鮮な興味を持ち続けるということは日々新しい刺激が産まれては消えていく世の中では難しいし、ちょっと調べれば自分より時間もお金もかけてその趣味を楽しんでいる人を見かけると萎えてしまうと言う人も少なからず居るだろう。

　そして稀に「好き」と「特性」を併せ持つ人も居る。
　例えば趣味でギターを弾いている人が居て、その人の指が生まれつき長いとか。指が長いからギターを選んだ訳ではなく、たまたま吸い込まれるようにハマっていった世界において身体的優位性があったということだ。そして同じようにその二つが全く合致しない人間も居て、それはそれで面白いのだが自分の場合はどちらにカテゴライズされるのだろうか。

　ご存知の方も多いと思うが自分は散歩が趣味である。そしてこれもご存知かもだが散歩しながら迷子になるのがとても好きだ。
　先日も休日を利用して迷子を楽しもうと家を出たのだが二時間もしないうちに見事迷子の軌道に乗ることが出来た。

　スタートは家から。毎日のように散歩をしてるのである程度のルートは理解しているにも関わらずである。これは根本的に地図が頭に入っていないのと方向感覚が壊滅的に欠落しているせいだと思われ、この才能は前述の特性の話と照らし合わせるならば「散歩」を趣味としてる人にとってはマイナスであるが「迷子」が趣味の人間にとってはプラスであると言える。

　この日、何時間もうろうろしてたどり着いたのが雑司ヶ谷霊園。
　そういえばながく東京に住んでいるがちゃんと来るのは初めてである。明治文学好きだとかえらそうに言ってるくせに。というわけで半ば偶然たどり着いたご縁で夏目漱石や小泉八雲の墓に手を合わせたりしてきたのでした。

　それから何度か詣でているのだが、やはり奇麗に手の入っている墓地と言うのは清々しい。小高い場所から新宿の方面を見下ろせて景色もいいし近くを都電が走っていて風情がある。なんならふらっと乗っちゃって良く知らない駅で降りてみるのも一興。そんなこんなで随分気に入っちゃったのであった。
　そんな今回のテーマは「お墓」。

　こちらのコラムは有料会員向けサービスです。月額￥500以上の有料コースに入会すると（もしくは入会済みの複数の有料コースの合計金額が￥500以上で）記事の続きをお読みいただけます。また、付与されたポイントを使用して音楽をダウンロードしたり、電子書籍を購入することができます。（※各記事の閲覧でポイントが使用されることはございません。）

ご利用には　

ログイン

　もしくは　

新規アカウント作成

　が必要です。